本による出会い

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"どうして詩を書くのをやめてしまったかって?
それは十七歳まで書いてきて、
もうこれ以上書くためには
勉強が必要になるとわかったからですよ。
大久保正博は日本料理店で、
茶碗蒸しを食べながらいった。
口髭を蓄えた、温厚な表情の実業家である。
その雰囲気からは、
三十年前に一世を風靡した「天才少年詩人」
帷子耀(かたびらあき)を窺わせるものは何もなかった。"

現在、
四方田犬彦さんの『詩の約束』を読んでいます。
「詩と訣別してしまった人間を、わたしは個人的に三人知っている。」
として始まる「訣別する」の章に最初に出てくる
帷子耀について次のように書いてありました。

"山梨県立甲府第一高等学校に在学中の帷子"

"一九六九年から七二年にかけて、
帷子耀の活躍は実に目覚ましかった。
彼は二年連続して『現代詩手帖』新年号に大作を発表した。"

"帷子耀本人は、二度と同じ作風の詩を書かなかった。"

"わたしは突然に彼に会ってみたいと思うようになった。
...彼は傘下に少なからぬチェーン店を持つパチンコ店の元締めであり、
全国パチンコ協会の要職にある人物だった。"

これらの記述でピンと来るものがありました。
私のバスケット部先輩のお兄さんだと・・・。

先輩に訊いてみたら、ビンゴ!でした。
この本に収録された文章の元になった記事がキッカケで
問い合わせが相次ぎ、
私の先輩のススメでかつての帷子耀さんの詩を
集大成した本が昨年10月に出たのだそうです。

『帷子耀習作集成』


この詩集も手に入れてみました。
本ってたまに、
こういう思いがけぬ素晴らしい出会いを用意してくれますね。