アンチ「ジャムのような濃いワイン」本

ジョナサン・ノシター著
「ワインの真実――本当に美味しいワインとは?」
を読了。

映画「モンドヴィーノ」の監督が、
世界の醸造家、ソムリエ、シェフ、
評論家、ワイン商などワイン界の大物たちに
論争を挑んでいく。

文化も含めた"テロワール"を重要視する著者は、
「ジャムのような濃いワイン」を推進する
醸造家ミッシェル・ロランや
評論家ロバート・パーカーをメチャメチャ貶してる。
時流に乗った業界人へのインタビューは、
「最初からそんなに敵対的でなくてもいいのでは?」と、
ちょっと一方的な部分もあるが、全部を読むとノシターのワイン観がよく分かる。

巻末の福田育弘さんの解説から、
長いけれども
ノシターのワイン観を説明した部分を引用したい。

「ノシターが賞賛するのは、
今や時流に押されて造られなくなった
シャスラやシルヴァネールなどの
高級とはいえない品種から造られる
愛らしい酸のある白ワインであり、
酸味と果実味のある
高級品種リースリングから造られる
アルザスやドイツの上質の白ワインである。
また、シュナン・ブランという
酸味と潜在的な糖度を兼ね備えた品種からできる、
さほど知られていないロワールの白ワイン、
たとえばユエットやフォローのヴーヴレーであり、
サヴァニャンという
独自の品種から酸味を強調して造られる、
さらに知名度の劣るジュラの白ワインなのである。
もちろんきれいな酸味のある限りにおいて、
シャルドネから造られるブルゴーニュの白も、
ローヌの白も評価される。

ワインに骨組みを与え、熟成を可能にするのも、
この酸味である。
厚みのある甘い赤ワインは、
熟成しても思いのほか良化しない。
酸こそ命なのだ。

だから、
赤でもノシターの好みははっきりしている。
ピノ・ノワールから造られる
熟成しても決して若々しい果実味を失わない
ブルゴーニュの赤ワインであり、
一部の愛好家を除いてあまり知られていない、
熟成してブルゴーニュと見紛う果実味を示す
カベルネ・フランから造られる
ロワールの最良の赤ワインなのである。」

このワイン観に興味や共感を感じるも人は、
この本を読んでみるといいと思う。
そうでない人はムカツクかもしれないので、ご注意を(笑)。