写真に取り憑かれて

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「メモワール 写真家・古屋誠一との二〇年」
(小林紀晴・著)を読了。
自殺した妻の飛び降りた直後の姿を
カメラに収めた写真家・古屋誠一を、
「趣味は古屋誠一」というカメラマンが
その人生を追いかけたノンフィクションだ。

古屋は、
妻を撮った写真を再構成して何度も何度も写真集を作る。
それは自分と妻の関係の再確認であるかのようだ。

古屋誠一と
その妻・クリスティーネの写真については
何度か雑誌で見たことがあった。
地面に落ちた彼女を撮った写真のコンタクトが
写真集には載っているはずだが、
それについては覚えていない。

小林が取材を続けていくうちに、
古屋は封印していた妻の日記を
知り合った女子学生に翻訳してもらって読み始める。
そしてそれを取り入れた写真集をまた作る。
妻を死に追いやってしまったのではないかという
後悔の念を持ちながら、
なぜそれを自ら暴くように公開するのか?
読み終えて思ったのは、
菅原道真や平将門を神社に祀って
鎮魂をはかるのに似た行為
なのではないかということ。

一人の写真家が
自分の撮った写真に取り憑かれて、
そこに救いを求め続ける姿を
別の写真家が見守る。
写真とは何か。
写真を撮るとはどういうことか。
深く考えるきっかけになる好著だと思う。