「源氏知らず」の「源氏」のお勉強

岩波新書「源氏物語の世界」を読了。

源氏物語は学校の授業で読んだ以外は
谷崎潤一郎が現代語に訳したものを
第一巻だけ買って挑戦したことがあるくらいだと思う。

たしか朝日か日経の読書欄の
2004年のおすすめ本特集の中で
何人かが紹介していたのが
「源氏物語の世界」だった。

源氏物語というと
光源氏がモテモテでいろんな女の人の間を
渡り歩くというイメージしかなかったが、
この本を読むとそれは全く違うようだ。

まず、この物語は光源氏が
巧みに権勢を確立していく政治物語であること。
これがかなりのボリュームを割いて説明されている。

そして、光源氏は
必ずしもすべての女性に受け入れられていない。
どちらかというと、変わった形の恋愛を好むために
すんなりいかないことの方が多いようだ。

さらに、源氏物語にも
シンデレラのような継子物語などの神話的枠組みが
埋め込められていること、
過去の実在の天皇の治世をパロディ化して利用していることなど、
興味深い文学的な解明もされていてとても分かりやすい。

最後に、源氏物語が
当時の不安定な女性の生き方を深く見つめる物語であり、
さらにはそうした女性たちとの生活を通じての
光源氏の成長の物語であることが分かる。

そういう物語であればこそ、
紫式部の同時代の読者には強いリアリティがあり
後世の人間にも自らの身に引きつけてのリアリティがあるのだろう。

やはり長い年月の間読み継がれる本というのは
多面的な読み方ができるものだということを
思い知らされた気がする。