生命のたくましさ

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「三週間後、爆心地松山町で蟻(あり)の群れが見つかった。
蟻は元気であった。一か月後にはみみずがたくさん見つかった。
またどぶねずみの走るのも見受けられた。
薯(いも)の葉を食う虫が一か月後には大いに繁殖した。
小動物がこんなふうに生息できるのだから、
人類の生息はできると私たちは考えた」"

今日の日経文化欄、
作家・青来有一さんのエッセイ「蜜柑の木で見つけたもの」から。
引用は長崎被爆直後の救護活動で知られる
長崎医科大学教授の永井隆博士の『長崎の鐘』から。

"3週間で、小さな虫たちは
ノアの箱舟にでも乗って災厄を逃れてきたように
原子野(げんしや)に帰ってきたのだ。"

生命のたくましさを感じますね。
でも亡くなった人たちは戻りません。

"だが、失ったものがそっくり帰ってきたのではない。
虫はどれも同じ顔をしているが、
被爆後の世界は前とは別の世界なのだ。
「あのひと」たちはもういない。
「あの暮らし」ももうもどらない。
唯一無二のかけがえのない存在が失われて今の繁栄がある。"