ジョセフ・リンのバッハ無伴奏ヴァイオリン全曲演奏会

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すみだトリフォニーホールで
ジョセフ・リン・ヴァイオリン・リサイタルを聴いてきました。

13時からと16時30分からの2部に分けて、
バッハの無伴奏ヴァイオリンのための
ソナタとパルティータ全6曲を演奏します。
前半は第1番と第3番のソナタ、
後半は第3番のパルティータと第2番という構成です。
座席は1階15列27番。

ジュリアード弦楽四重奏団の第1ヴァイオリン奏者
としても活躍するジョセフ・リン。
彼が弾く音はじつに艶やかで、
しかも音楽に内在するリズムを巧みにすくい上げて、
ロックにも通ずるドライヴ感を創り出しています。
各曲の最終曲の盛り上がりと満足感は
言葉に例えようがありません。
第1部では、第1番のソナタが特に素晴らしかった。

15時からは、指揮者でもあるチェロ奏者、
大槻カール晃士さんによるレクチャー。
冒頭にジョセフ・リンが、
原稿付きながら流暢な日本語で挨拶をしてくれました。
大槻さんは、
第2部で弾かれるシャコンヌについて
バッハのスペシャリストとして突っ込んだ話をしてくれました。

面白かったのは、トリルのことです。
ジョセフは今回、
トリルの音を本来の音から始めてるそうです。
私は知識がありませんが、
トリルというのは上の音から
始めるのが定番なんだそうですね。

大槻さんから疑問を呈されてのリンの回答は、
「上から始めると5度の音程になってしまう。
バロックの時代には5度は禁則だったから」だとのことです。

第2部は席が空いているので、
少し後ろの高いところに席を移してみました。
音量に全く不足なく、
素晴らしい音の浸透力でした.

第2部では、第2番ソナタが圧巻。
緩やかに始まり、迫力のフーガから、
幽玄なアンダンテ、超高速で疾走するアレグロまで
音色の豊富さ、響きの精妙さ、
弾く姿の美しさを堪能しました。

しかし、さらに盛り上がります。
後半でラストの第2番パルティータは、
最後の有名なシャコンヌ(チャッコーナ)に向けて、
"魂のヴァイオリニスト"と呼ばれる
ジョセフ・リンの本領発揮で、
劇的に盛り上がりました。

いわゆる"濃い"タイプの演奏で、
私の好みとは若干違いますが、
感動的な演奏。
観客の入りが、おそらく半分以下だったのと、
この渾身の演奏をライヴ録音してなかった
ようなのがじつに残念です。

「すみだ平和祈念コンサート」ということで、
3月10日の東京大空襲の犠牲者を悼んで毎年行われるコンサートです。
開館20周年の今年は、広島交響楽団も参加。
今日は、地元の人がかなり来ていたようですが、
無伴奏ヴァイオリンはちょっとハードルが高かったですかね?
他にもいくつかコンサートが行われますので、
チェックしてみてください。

私は3月10日の新日本フィルの回に行く予定です。

コンサートの後は妻と待ち合わせて
西荻窪「戎 北口店」で一杯。
アジ刺しが美味しかった。