キャスリーン・バトルの黒人霊歌

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

サントリーホールでの
キャスリーン・バトル・プレミアム・ナイトを聴いてきた。

座席は1列目のほぼ真ん中。
座席選択でここしか選べなかった(笑)。

彼女を生で聴くのは初めて。
有名な「オンブラ・マイ・フ」で始まる前半は、
静かな展開。
時折超絶な声を披露するものの淡々と進んでいった。

後半に入って2曲目の
オブラドルス「いちばん細い髪の毛で」が
彼女の声を活かしてじつに良かった。
次のトゥリーナという作曲家もスペインの人らしいが、
この系統をもっと聴いてみたかった。

そんなことを思っていたら、
ガーシュウィンから黒人霊歌まで、
バトルのリリック・コロラトゥーラ・ソプラノ歌手としての
技を見せつける怒涛のアメリカン・メドレーが始まった。

軽快に歌った「マイ・フェイバリット・シングス」も良かったが、
続々とアンコールでも歌った
スピリチュアル・ソングが素晴らしかった。
キメの高音はどれも感涙ものです。

「父から教わった歌『Two Wings』です」などのコメントもあり、
なんだか教会で
ゴスペルを聴いているような雰囲気だった。
バトルもじつに嬉しそうに歌うし、
心なしか涙ぐんでいた気もする。

数々のトラブルを起こし、
メトロポリタン歌劇場から閉め出されたり、
10年前には来日コンサートをドタキャンしたという
キャスリーン・バトルも69歳。
昨秋に行われたMETでの和解のコンサートも
演目は黒人霊歌だったという。

声に全盛期の輝きはないのかもしれないが、
黒人霊歌という安住の地を見つけて
気持ちは落ち着いたのかもしれない。
人生としてはそれもありですね。
考えさせられたコンサートでした。

追記)バトルの過去のトラブルについては、こちらのブログが興味深かった。
玄龍の琵琶の調弦
「キャスリーン・バトル賛」