アファナシエフのベートーヴェン&ショパン

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紀尾井ホールでの、
ヴァレリー・アファナシエフの
リサイタルを聴いてきた。
座席は1階2列22番。
手元は全く見えず、
表情もかろうじて見える程度。
しかし音はよかった。

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第8番ハ短調 Op13「悲愴」
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第14番 嬰ハ短調 Op.27の2「月光」
   ***
ショパン:ポロネーズ 第1番 嬰ハ短調 Op.26の1
ショパン:ポロネーズ 第6番変イ長調 Op.53「英雄」
ショパン:ポロネーズ 第2番変ホ長調 Op.26の2
ショパン:ポロネーズ 第3番 イ長調 Op.40の1「軍隊」
ショパン:ポロネーズ 第4番 ハ短調 Op.40の2

アンコール)
ショパン:マズルカ第49番イ短調 Op.68の2

ベートーヴェンの有名なピアノ・ソナタ2曲に、
ショパンのポロネーズを合わせたプログラム。
これが驚きの怪演だった。

テンポと強弱を自由に変化させ、
強調する音を選び直し、
構成し直したようなベートーヴェン。

「悲愴」第三楽章の疾走感と、
「月光」第三楽章の高揚感が素晴らしかったが、
「月光の波に揺らぐ小舟のよう」として有名な
第一楽章が最高に印象的だった。
とてもゆっくり演奏されるアルベジオのような旋律が
エリック・サティのようで、
ミニマルな趣さえ感じさせて感動的だった。
「これがベートーヴェンなのか?」

後半のショパンは、例えは悪いが、
恋に狂ったベートーヴェンが山下洋輔に憑依して、
ポロネーズを力の限りに弾いて
激情を表現したかのような演奏。
不意の休止が心に残る。

ショパンに普通に期待する
華麗さとか瀟洒な雰囲気とかは全くなく、
バロック的な過剰さが印象に残る。
アンコールのマズルカを聴く限り、
しなやかで流麗な演奏もするので、
ある意味で確信犯だと思う。

曲目が何でも、
"ヴァレリー・アファナシエフの過剰な音楽"を
楽しむのが正解なんでしょうね。
なんだか、ラーメン二郎みたいだ(笑)。

追記)
コンサート会場で買った
ベートーヴェンのピアノソナタ集
その後、何度か聴いた。

ベートーヴェンが書いた音符を
いったんバラバラにして
新たに再構成したかのような演奏。
何度も聴いていると、
これまでなぜこう弾かなかったのかが
不思議になってくるから面白い。