バッハ無伴奏チェロ組曲による"祈り"

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●10月28日
A.A.サイグン: パルティータ
J.S.バッハ: 無伴奏チェロ組曲第1番 ト長調 BWV1007

M.オコナー: アパラチア・ワルツ
J.S.バッハ: 無伴奏チェロ組曲第2番 ニ短調 BWV1008

G.クラム: 無伴奏チェロ・ソナタ
J.S.バッハ: 無伴奏チェロ組曲第3番 ハ長調 BWV1009、他

●10月29日
P.ヒンデミット: 無伴奏チェロ・ソナタ
J.S.バッハ: 無伴奏チェロ組曲第4番 変ホ長調 BWV1010

P.グラス: オービット
J.S.バッハ: 無伴奏チェロ組曲第5番 ハ短調 BWV1011

チャオ・チーピン: 草原の夏
J.S.バッハ: 無伴奏チェロ組曲第6番 ニ長調 BWV1012

アンコール : 「鳥の歌」(カザルス編曲)

ヨー・ヨー・マの
バッハ無伴奏チェロ組曲
全曲演奏会を聴いてきた。
各曲に現代音楽の小品を組み合わせて、
2日にわたって番号順に演奏するという
ユニークなプログラムだった。

座席は、
28日は1階4列38番。
右端でやや見にくかった。
29日は2階LB6列12番。
マを上から見下ろす感じで、
とても見通しがよかった。

今回の白眉は、
昨日の第3番と今日の第5番。

第3番は、
激情的なクラムの音楽の後に、
朗々と盛り上がる第3番が
ライヴらしいメリハリの効いた演奏で
とてもよかった。

第5番は、
フィリップ・グラスの物悲しい曲をプレ序曲に、
緩急の差を思いきってとった
極めてロマンチックな演奏。
マも感極まったのか、
終わってしばらく間をとって拍手をさせない。
一風変わった演奏だったが、
これがとてもよかった。

しかし、
その後にクライマックスがあった。
会場にカメラが入っていたので
おかしいなと思っていたが、
ヨー・ヨー・マがアンコールで
持って出てきたチェロの裏面には
"奇跡の一本松"の絵が。
しかも、その楽器は
震災の流木から作られたものだという。
カザルス編曲「鳥の歌」を祈るように演奏すると、
会場はほぼ総立ちとなった。

物悲しいサイグンに
スムーズな演奏の第1番、
カントリーっぽいオコナーに
音が重層的に鳴り響く第2番、
現代的な響きのヒンデミットに
端正に盛り上た第4番も
それぞれ楽しめた。

最後に弾いた、
中国の祈りのような
チャオ・チャーピンの曲の後に、
有名なガボットがある第6番を
比較的軽めに弾いたのは
この曲とのバランスを
考えてのことだったかもしれない。

全体にロマンチックだった演奏会を
"祈り"をキーワードに振り返ると、
マの意図がよく分かった気がする。