シニカルなエコノミストの怜悧な分析

「Freakonomics」を読了。
7月初旬に届いてから1ヵ月半かかった計算になる。
6章に分かれたそれぞれのテーマを
読み終わるたびにやや一段落して、
他の本を読んだりしたために時間がかかったが、
話は面白いし、英語もそんなに難しくはない。
(regression analysis=回帰分析、など専門用語はあるけれど)

タイトルが、
Freak+EconomicsでFreakonomics「フリーコノミクス」。
副題が、
「 A Rogue Economist Explores the Hidden Side of Everything」。
「変わり者エコノミストが様々なデータの知られざる側面を暴く」
とでも訳すのだろうか?

彼の立てた6つの章のタイトルからして、
たしかに変わっている。

   1.学校教師と相撲取りの共通点は?
   2.KKK(クークラックスクラン)と不動産屋はどこが似ているか?
   3.ドラッグの売人はなぜ母親とまだ住んでいるのか?
   4.犯罪者たちはどこへ行ってしまったのか?
   5.どうすればパーフェクトな親になれるのか?
   6.Roshandaが名前を変えたら人生がうまくいくだろうか?

そして、
著者スティーヴン・D・レヴィットの独特の視点が
人の神経を逆なでするようなシニカルな結論を導き出す。

「学校教師は点をごまかす。相撲取りも八百長をする」
「中絶の合法化が大幅な犯罪減少につながった」
「子供にとって、ピストルがある家と、プールのある家とでは、
プールのある家の方が何倍も危険だ」

これらの彼の結論が
すでにアメリカで大きな議論を巻き起こしているという。
しかし、彼の結論の導き方は、
データに基づいていて説得力がある。

正直言って「だからどうなの」どいう項目も多く、
”データおたく”になりすぎているきらいもあるが、
そこがまたとても面白い。
要するに、
「Conventional Wisdom=通念」にとらわれずに
データを観る大切さを教えてくれる。

おそらく共著者のスティーヴン・ J・ ダブナーの
筆力によるものがけっこう大きいのかもしれないが、
翻訳されたら大きな話題になると思う。

最後に、
The most brilliant young economist in America.
「アメリカで最も優秀な若手経済学者」の称号を持ち、
データ分析力を駆使して世間の常識に挑戦する、
そんな完璧な機械のような強いイメージのレヴィットだが、
人間的な側面も描かれている。

1歳になったばかりの自分の息子が急死した。
その子がドナーとして肝臓を提供した子供の
家族とも深く付き合っているという。
その後は、3人の養子を育てる。
さらには、
同じ境遇の子供を亡くした親たちの活動に参加する。
そこでいかに多くの子供たちが亡くなっているかを知り、
様々なことを調べた結果が、
この本の最後の2章につながっている。
このことを読んで胸を打たれた。

ぜひ一読をおすすめする。