女優の筆力

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"視界をザザーっとなぎ倒す爆風。そこここに飛び散る火柱。
低く身をかがめて走る私にビショぬれの布団が重たかった。"

今日の日経新聞「私の履歴書」から。
女優・岸惠子さんの今日のタイトルは「横浜空襲」
死を目の当たりにした体験も凄いですが、
その経験を簡潔に淡々と描写する筆力に驚かされます。

目を見開いたままの死体。機銃掃射。
直撃弾を受けた自分の家が燃え崩れる姿。
兵隊に連れて行かれた防空壕をを見て
「ここにいたら死ぬ」と思って飛び出して、
母親の言いつけ通りに待ち合わせ場所に急ぎます。

"防空壕にいた人のほとんどが爆風と土砂崩れで死んでしまった。
大人の言うことを聞かずに飛び出した私だけが助かった。

「もう大人の言うことは聞かない。今日で子供をやめよう」と私は思った。"

さすがは、
小6で「作文は得意」だったというだけあります。
ぜひご一読をお薦めします。