アファナシエフのブラームス

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紀尾井ホールでの、
ヴァレリー・アファナシエフによる
オール・ブラームス・ピアノ・リサイタルを観てきた。
客席は1階6列19番。
アファナシエフの顔はよく見えるが、
手元はほとんど見られない。

僕が
アファナシエフにはまるキッカケになった
CD「ブラームス:後期ピアノ作品集」全曲に
「7つの幻想曲」を合わせたプログラムだった。

   7つの幻想曲 作品116
   3つの間奏曲 作品117
   6つのピアノ曲 作品118
   4つのピアノ曲 作品119

最初の「7つの幻想曲」は、
曲への馴染みがなかったせいか、
今ひとつ入り込めなかったが、
いちばん好きな「3つの間奏曲」で
一気に彼のピアノに魅き込まれた。

巨躯と長い腕、大きな手を生かした
重厚な構築感のある中低音と、
顔に似合わず(失礼)リリカルで
夢想的な高音は健在で、
音楽のダイナミズムが尋常ではない。

後半の
「6つのピアノ曲」「4つのピアノ曲」は絶好調。
なかでも白眉は、最後の「ラプソディー」だった。
力いっぱいのフォルテが見事で、
堂々としてスケールの大きいフィナーレになった。
ヴァレリーは、
弾き終わると同時に立ち上がり、
一礼だけして去って行ってしまった。

聴衆の万雷の拍手には
もちろん何度か出てきて応えたが、
アンコールはなし。
プログラムの構成からいって
演奏しても蛇足になりそうだ。

素晴らしい演奏。
素晴らしい土曜日の午後になった。