鳥肌もの

遅ればせながら、
先日講談社エッセイ賞を受賞された
穂村弘さんの『鳥肌が』を読み終えた。

日常に潜む"鳥肌が立つ瞬間"を巧みに描いた、
楽しめながらも背筋がゾクッとする小編が詰まった本だ。

読んでみていちばん鳥肌が立ったのが、
「しまった、しまった、しまった」という章。

"友人兼担当編集者だったNさんが亡くなってから十年になる。自殺だった"

"「早く書いてくれないと、私が生きているうちに間に合いませんよ」。
まだ二十代の彼女の言葉を私は冗談と受け取った。"

穂村さんは彼女とやりとりした
「それほど多くはなかった」メールの全てに目を通してみる。

"このやりとりの中のどこか一行でもちがっていたら、
Nさんは亡くなっていなかったのではないか、そう思う。"

この経験から穂村さんは、
「自殺のニュースをきくと、
それが全く見ず知らずの人であっても
微量の責任があるように感じる」として、
「その最大のケース」を取り上ている。

"「ビルの屋上に呼ばれて別れ話をしていたら、
突然、『俺のこと、忘れられなくさせてやるよ』と云って
目の前から消えちゃった。笑顔でした。
...「もう三十年以上経つけど、今も毎晩夢を見るんです」"

この恐ろしい話にも、
救われる結末がありますが、それは原本をご覧ください。

たしか、選評も書かれていたが、
この本は表紙にも栞ひもにも紙の本ならではの仕掛けがある。
ぜひ一度手にとってみていただきたい。
おそらく、鳥肌が立ちますよ。